昨今、話題になっているHSPという言葉。

エレイン・アーロンが提唱した概念で、
Highly Sensitive Personの頭文字を取って
「人一倍敏感な人」という意味です。

また、「人一倍敏感な子ども」として、
Highly Sensitive Child(HSC)という言葉もあります。

大体20%くらいの割合でいるとされています。

専門家の中には「不登校の原因はHSCだ」と言う人もいますが、
私はそういう風には思っていません。

HSCやHSPでも学校で楽しく過ごし、
そして社会で活躍できている人はたくさんいます。

ちなみに不登校の割合は2%です。

なので、HSPやHSCの一部の子が不登校ではないかと考えています。

もちろん、不登校の子どもの中には、
過度に敏感・繊細で生きにくさを感じている子も少なくありません。

今回の記事では、HSCの子の不登校に焦点を当て、
どうサポートすればいいのかについてお話させていただきます。

そもそもHSCとは何?

エレイン・アーロン(2015)によれば、
HSCは以下の4つの側面が全て該当するとされています。
逆にどれか1つでも当てはまれなければ、
アーロンが提唱する人一倍敏感な子どもには
当てはまりません。

その側面とは以下の4つを取り、
通称DOES(ダス)」と呼ばれています。
参考にした書籍はこちらをどうぞ。

D:深く処理する(Depth of processing)
O:過剰な刺激を受けやすい(being easily Overstimulated)
E:感情的に反応しやすく、共感性が高い
(being both Emotionally reactive generally
and having high Empathy in particular)
S:ささいな刺激を察知する(beingaware of Subtle Stimuli)

それぞれ見ていきましょう。

①D:深く処理する

HSCの子は一般的に行動するのにかなり時間がかかります。

その根底にあるのは、突き詰めて考えてしまうということ、
安全かどうか納得するまで様子を窺ってしまうということです。

ある研究によれば、脳の「島」と呼ばれる
様々な情報を処理する部分が
HSCの人は人一倍活発になりやすいという報告もあります。

結論がでるためにかなり時間を掛けてしまうため、
周りから見れば「臆病な子」「引っ込み思案な子」だと思われがちです。

また、考える過ぎるために、
他のことに手が回らなかったり、
体調を崩すといった子もいます。

②O:過剰な刺激を受けやすい

HSCの子はいろんな刺激に圧倒されやすい傾向があります。

また、ちょっと刺激にもニューロンが反応してしまうため、
多くの人では気にもしないようなものにでも引っかかってしまい、
動けなくなることも多々あります。

例えば、
楽しいイベントでも音や光など刺激が強すぎると、
圧倒されてしまい、
かえってきたらぐったりとなってしまうことも少なくありません。

またラジオとテレビを同時につけると、
脳が混乱してしまい、
落ち着かなくなるHSCの子は結構多いのです。

そのため、静かで落ち着いた空間で過ごしたり、
ダウンタイムを入れることで休ませることで
脳の疲労を回復させていくということが必要です。

③E:感情的に反応しやすく、共感性が高い

HSCの子は暴力的なシーンや修羅場を見るのが
非常に苦手な傾向があります。

それは感情的な刺激に反応してしまい、
心を痛めてしまうためです。

また、HSCの人は周りの人のストレスや
ちょっとした感情の変化にも敏感に感じ取ります。

なので、周りからは
「人のことを良く見ている」
「優しい子」
と呼ばれることも少なくはありません。

ちなみに、HSCの子は
ミラーニューロンの働きが
他の子よりもかなり活発である
という研究結果もあります。

ミラーニューロンは他の人の動作を見て
同じ行動をとっているかのような反応を見せる
神経細胞で共感性の高さに関わります。

一般にHSCの子は叱責は必要なく、
ちょっと困った顔をすると、
相手の心情を察してくれます。

これも共感性の高さゆえと言えるでしょう。

④S:ささいな刺激を察知する

HSCの子には気づかないような臭いにも敏感だったり、
ちょっとした家具の位置などに気づくことが多く見られます。

ただ、逆に言えば
人には気づかないような変化にも
気づくことができるという長所でもあります。

観察力が高いともいえるでしょう。

例えば、いつもと違う声のトーンに気づいて、
「あ、しんどいんだろうな」と気づいたりします。

ただ、常にいろんな刺激を察知しすぎると、
脳が疲弊してしまうことは言うまでもありません。


こうした特性が全て当てはまっていると、
アーロンの提唱するHSCの概念に当てはまると言えます。

 

学校はHSCにとって脳が疲れやすい場所

HSCの子にとって学校現場はとてもしんどいところです。

  • まず、いろんな音や刺激がたくさんあります。
  • そして多種多様な子がいます。
  • その分感情的な刺激もたくさん受けます。
  • そして変化も多く、HSCの子はついて行くだけで精いっぱいす。
  • しかも休憩時間はわずか5分~10分、急かされるようなペースで結論が出るまで待ってくれることはありません。
  • みんな一緒に行動をとらないといけないのが学校現場です。

もちろん、そうした環境でも必死に頑張って卒業までいく子もいます。

ただ、HSCは脳が疲弊しやすいので、
家に帰ってきたらぐったりすることも多いでしょう。

また家に帰ったらゲームに没頭したり、
ぼーっと過ごすことも多いです。

これに不登校3つの原因が全て重なってしまうと、
不登校になるリスクが一気に高くなります。

HSCの不登校児を育てる際に気を付けたいこと

ちなみに、私は不登校の原因として
HSCを考えることはあまりありません。

また、HSCに関するノウハウを用いて
カウンセリングをすることもあまりありません。

※必要だと思えばもちろんします。

ここで気を付けたいことは、
HSCと言う概念は、
あくまで子どもを理解する手段でしかない
ということです。

一番まずいのは
HSCという言葉だけが独り歩きしてしまって、
子どもの理解が全くできなくなることです

これは発達障害や精神疾患の
子どもをサポートするときにも同じことが言えます。

例えば、
「この子はADHDだから」と仰るお母さんの多くは、
子どもをADHDという枠組みでしか見れなくなる傾向があります。

同じように「HSCだから」と捉えてしまうと、
その枠組みでしか子どもが見れなくなってしまいます。

繊細さ以外にも、その子の性格や行動パターン、
考え方や思いなどいろんなその子らしさはあります。

HSCだから、発達障害だからという視点だけで見てしまうと、
そうした深い理解ができなくなってしまうのです。

HSCと言う概念はあくまでも子どもを理解する参考資料です。
そのためのツールとして取り入れて頂きたいと思います。

敏感な子どもをサポートするために知っておきたい3つの視点

敏感な子どもをサポートする為には、次の3つの視点を持つことが大事です。


  1. 子どもと親の敏感さは異なることを知る
  2. 子どもの敏感さの可能性を知る
  3. 子どもは自分で考えることできることを知る

以下簡単に説明させていただきますね。

1)子どもと親の敏感さは異なることを知る

全く同じ考え方、感じ方をする人は一人としていません。

ちなみにアーロンは「生まれつきの性格」はないと言っていますが、
私は「ある」と確信しています。

敏感さ+発達特性+性格、そして経験によって、
感じ方は人それぞれです。

なので、
「親もこう感じているから子どもも同じように感じている」
とは思わずに、
「この子はこう思っているのかな?」
といったん立ち止まることが大切です。

必要に応じて確認してみる、
子どもに聞いてみるということも有効でしょう。

2)子どもの敏感さの可能性を知る

確かに敏感さゆえに日常生活が
他の子と同じように送れなくなる子は多いです。

「なんでみんなと同じことができないの?」
と傷つき、悩む子もいます。

しかし、それは裏を返せば長所にもなります。

私たちは自分で自分の長所には
なかなか目がいかない生き物です。

ついつい欠点ばかりに目が行ってしまいます。

子どもが敏感さゆえに「自分はダメだ」と思っていた場合、
「その敏感さは長所なんだよ」
と教えていきたいものです。

「あ、これって実は私の才能なんだ」
そう思えるだけで、子どもは元気を取り戻し、
そうした自分と上手に付き合う術を学ぼうとします。

まずは、親の方から、
「敏感さの可能性」を探していく、見つけていく
ということが子どもの才能を伸ばすことにつながります。

3)子どもは自分で考えることできることを知る

敏感な子どもはついつい考え過ぎてしまうために、
立ち止まってしまうことがあります。

周りから見れば、「この子は自分では動けない子だ」と
思われてしまうことが多々あるのです。

そこで手を貸してしまう人もいますが、
あまりにも手を出し過ぎてしまうと、
子どもは何も考えられなくなってしまいます。

親が手を出したいという気持ちもわかるし、
子ども自身、気持ちがグチャグチャになっていて、
整理ができないからです。

子どもには「自分で解決する力があるんだ」と信じましょう。

そしてその子のペースで歩き出すまで待つという選択も大事です。

実際に子どもが自分で歩き出して前に進むのを見て、
「あ、この子は自分で考えられるんだ」と知ることがあります。

そうすることで親自身も子どもが信じられるようになり、
親子の成長へとつながっていきます。

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まとめ

今回はHSCと不登校についてお話をさせて頂きました。

ちなみに、HSCは「人一倍敏感な子」ですが、
私が言っている不登校の原因は
「繊細さ、独特の感受性」です。

なので、両者は似ているようでちょっとニュアンスが異なります。

敏感さと言うのは、あくまでも神経伝達の敏感さであり、

繊細さや感受性と言うのは、
受け取り方や他の子とは違う感性みたいな部分です。

なので、不登校3つの原因に当てはまらないHSCの子もいれば、
完全に当てはまるHSCの子もいます。

参考までに・・・

今回は不登校になったHSCの子の対応として
書かせていただきました。

皆さんのお子様の理解のヒントになれば幸いです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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田中勝悟

田中勝悟

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不登校専門心理カウンセラー
カウンセリングルームはぴっと室長
臨床心理士 公認心理師 選択理論心理士
「3つのステップ」によって親子が成長していくことで、不登校をプラスに乗り越えることをサポートする専門家。生まれつき性格という観点から、親が子どもの理解が深まることを主眼においてカウンセリングを実施している。

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