いつも読んでいただいてありがとうございます。不登校解決カウンセラーの田中勝悟です。
質問者不登校支援というと、お子さんへのカウンセリングのことだと思っていました。なぜ親への支援が必要なんですか?
田中そう思われるのも当然だと思います。実は、不登校支援で何よりも大事なのは、子どもではなく親への支援なんです。今回はその理由を、選択理論心理学という考え方をもとにお話しします。
j地右派、不登校解決のために本当に支えるべきなのは、子どもではなく親御さんです。
私は2026年10月、日本選択理論心理学会に参加し、「選択理論心理学から見る不登校の親支援」というテーマで学会発表をさせていただきました。私自身、選択理論心理学のトレーニングを受け、選択理論心理士の認定資格を持っています。
今回はその発表内容をもとに、不登校の親支援についてお話しします。
学会での様子についてはこちらを参照してください
選択理論心理学とは
選択理論心理学は、アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサーが提唱した心理学の理論です。
「人は、外部からの刺激に反応して行動しているのではなく、自分の内側にある欲求を満たすために、自ら行動を選択している」という考え方がベースになっています。
この理論でよく語られるのが「外的コントロール心理学」との対比です。
外的コントロール心理学とは、「相手は自分の力で変えられる」という前提に立ち、罰したり、批判したり、褒美で釣ったりして相手を思い通りに動かそうとする関わり方を指します。
選択理論心理学では、この関わり方は人間関係を壊す大きな要因になるとされています。
不登校の親支援を考えるうえで、この視点はとても重要です。
「子どもを変えよう」とする関わりそのものが、実は選択理論心理学でいう外的コントロールにあたり、親子関係を悪化させてしまうことがあるからです。
詳しくは後述します。
グラッサーの文献はこちらも参照
不登校の親は孤独を感じている
まず、知っておいてほしいのは、不登校の親の多くは孤独感を抱いているということです。
子どもが不登校になった時点で、学校に行っている子の親とは話が合わなくなります。
運動会や文化祭、宿題をしなくて困っているといったママ友同士の雑談が、とても苦痛に感じるようになります。
また、ママ友との会話もかなり気を遣うようになります。
例えば、「うちの子、学校に行っていないんだよね・・・」と言うと、「そんなんだとその子、社会で生きていけなくなるよ」と言われたり、「大丈夫よ、何とかなるって。心配しなくてもいいんだよ」と軽い言葉で返されたりします。
当事者の親からすれば、「私の何をわかっているのか」となりますよね。
そうした中で、「誰も私の気持ちをわかってくれない」となって、ふさぎ込んでしまい、孤独感を募らせていくのです。
選択理論心理学が教える「基本的欲求」
選択理論心理学の提唱者であるウィリアム・グラッサーは、「私たちが幸せに生きるためには欲求が満たされることが必要」と言っています。
この欲求を基本的欲求と言うのですが、グラッサーによると次の5つがあるとされています。
- 生存の欲求(安全・健康に生きたいという欲求)
- 愛と所属の欲求(人とつながりたい、受け入れられたいという欲求)
- 力の欲求(認められたい、価値を感じたいという欲求)
- 自由の欲求(自分で選び、自分らしくありたいという欲求)
- 楽しみの欲求(学び、楽しみたいという欲求)
この5つの欲求は、誰にでも備わっているものですが、満たされ方は人によって異なります。
そして、そのうち最も満たすのが難しいけれど、真っ先に満たす必要があると言われているのが愛と所属の欲求です。
人は孤独の中では過ごすことができないとされている所以でもあります。
不登校の親御さんを見ていると、この「愛と所属の欲求」が大きく欠けてしまっているケースが非常に多いと感じています。
孤独の中で、自分を理解してくれる人がいない状態が続くと、他の欲求(力・自由・楽しみ)も満たしづらくなり、心の余裕がどんどんなくなっていきます。
「不登校の親の会」が持つ意味
私は2024年12月〜2025年1月の間、「不登校の親も成長しているのではないか」という仮説を立てて、調査研究を実施しました。
その結果を前年の心理臨床学会で発表したのですが、親の成長には「親の会」が大きく関わっているという事実がありました。
実際、私が開催している親の会でも、不登校のお母さん同士が助け合うことで、大きく前進しているケースをたくさん見てきました。
親の会の利点は、何よりも「自分の苦しさを理解してくれる人」と出会えたということです。
あるお母さんは
「ここにきてやっと息が吸えるという感じが持てました。ここまで自分の苦しさをわかってもらえた経験はなかったです」
と涙を流しながら話されていました。
先ほどの欲求充足の話で言えば、「愛と所属の欲求」と「力の欲求」が満たされたということになります。
「わかってくれた」
「自分を認めてもらえた」
「これでいいって許された感じがした」
そうした人たちとのつながりが、親の苦しみを一気に癒していきます。
それは一つの救いです。

私たちは人とのつながりで成長していく
私たちは誰しも「人とのつながり」の中で成長していきます。
それは家族であったり、職場の同僚であったり、友人であったり。
また、カウンセラーや支援者であることもあるでしょう。
そうしたつながり、支えを通して、気づきが得られて、前に進みだすことができます。
そして、親自身の欲求が満たされていくと、少しずつ子どもにも変化が出てきます。
学会でご紹介した事例では、リストカットや家庭崩壊、解離性人格障害などを発症した、まさに重篤なケースでした。
しかし、お母さんが一つずつ覚悟を決め、「子どもをレールにどう乗せるのか」ではなく、「子どもの心と命をどう守るのか」と覚悟を決めた瞬間、大きく変わっていきました。
そして、子どもが変わっていく中で、前を向く中で、家族が再統合されて、お母さんもお父さんも成長していくようになりました。
その時に必要だった一言は、親の会のある一言です。
「認めてあげれば、オッケーなんじゃない?例えそれが世間的にダメと言われることであっても・・」
この言葉でお母さんは腹を括る覚悟ができたと言っています。
そこまで行くためには、このお母さんも相当な苦労がありました。
でも、お母さんが成長し、変わっていったことで、お子さんは劇的に変化し、今は大学にも通い、家族関係も良好になっています。
不登校支援の要は子どもではなく親
私は2019年に開業してから、不登校の親支援をしてきていますが、これを続けてきて本当に良かったと感じています。
「不登校支援をしています」と話すと、「お子さんの支援ですか?」と言われることが多いのですが、実はお子さんと会うことはほとんどありません。
私のカウンセリングの9割以上は親が来られます。
なぜ、親支援をしているのかというと、親が成長していくことが結果として子どもを救うことになるからです。
子どもが不登校を乗り越えていくためには、親子関係が良好であることが必要です。
その要となるのは、親が「この子はどんな風になっても大丈夫だ」と心から思えるようになるということ。
「こうすれば学校に行くのでは?」「こうすればよくなるのではないか?」と思っている内は、子どもはよくなりません。
これはまさに、先ほどの選択理論心理学でいう「外的コントロール」の発想です。
「子どもを変えようと思って関わる」ことを、選択理論心理学では「外的コントロール心理学」と呼んでいます。
つまり、「相手は何とかして変えられるのではないか」と思って関わろうとすることです。
この考え方で関わると、多くの場合、親子関係が悪化し、不登校はさらに深刻なものへと変わっていきます。
ちなみに、基本的欲求が満たされず、メンタルが悪化していくと、「相手を変えたい」という思いはさらに強くなっていきます。
なぜなら親も不安で焦りもあり、この状況を打開するために、「子どもを変えないといけない」という信条に固執してしまうためです。
自分が楽になるために「相手を変えよう」とします。
簡単に言えば、「この子のメンタルが改善して、フリースクールや学校に行くようになれば、苦しい状態から抜け出せるのに」という思考が、なかなか消えていかないのです。
そして、子どもも「これ以上、自分を殺さないでくれ」と願っています。
学校の枠の中で、自分を押し殺しながら頑張ってきて、そして疲弊して不登校になりました。
言い換えれば、「自分らしく生きるため」「自分を守るため」に不登校という生き方を選んだのです。
そんな状態で、親から「こういう風に変わってほしい」と圧をかけられると、「自分をもう苦しめないで」とさらに守りに入ってしまいます。
結果として親子関係が悪化し、子どもは自分を守ることにエネルギーを使うため、さらに状態は悪化します。
でも、親自身が孤独で欲求が満たされていないので、「子どもを変えたい」という気持ちはなかなか抜けられないのです。
だからこそ、まずは「親を支えていく」という支援がとても大事なことになります。
親が変われば子どもが変わる
親が変われば子どもは変わっていきます。
これは言い換えると、「親が成長すれば、子どもも成長していく」ということでもあります。
実質、私は親カウンセリングをしていますが、親のメンタルが安定し、「こういう風にしていけばいいんだ」というのが見えた瞬間、子どもとの関係が一気に改善していったというケースを見てきました。
中には、中学校3年間、学校に行かなかったものの、親子関係が良好だったことで、中3になって自分で進路を考えるようになり、自分に合った通信制高校を選んだケースもあります。
今はレポートもスクーリングも頑張っていて、友達もたくさん作って、「大学に行きたい」と言うようになりました。
この間、お母さんはすべて「子どもに任せる」という方針を貫いており、進路選択もレポートや課題も全く口をはさんでいないということです。
それでも子どもが自分で考えて動くので、「子育てってこんなに楽だったんですね。今まで気負い過ぎていました」と私に話してくれました。
学会での発表を終えて、参加者からいただいた声
今回の学会発表では、参加されていた支援者の方々からも、たくさんの感想をいただきました。一部をご紹介します。
- 「具体的にデータを示していただきながら、さまざまな視点に解決策、支援策をありがとうございました」
- 「娘が不登校傾向なのですが、先生のお話はとても参考になりました。『どんな状態であっても認めてあげる』ことを私も頭に入れて、子どもと関わっていけたらと思います」
- 「親が自分にできることに焦点を合わせた内容で、研究結果も納得させるエビデンスのある素晴らしい内容でした。家庭問題と子供の状況の関わりの深さを感じます。『不登校は自分らしく生きられないサイン』でもあるというのは、とても響きました」
- 「中学校で勤務している養護教諭です。学校の中で、私たちは不登校の子どもへの関わりに注力しがちです。保護者への支援の方が重要なんだ、ということは新しい学びでした」
- 「具体的なケースもふくめて、とても良い学びになりました。親の見方、関係性や家庭のありかたが子どもの選択にも大きな影響をあたえているというのは、私自身の見方も変わる学びでした」
こうした声からも、「子どもよりも親のサポートが特に重要」という考え方が、不登校支援に関わる現場の方々の間でも大きな関心を集めていることを感じています。
一人で不登校の子を支えることは、とても困難です。
そうした不登校を笑顔で乗り越える仲間の一人として、私も微力ながらお手伝いをしていけたらと思っています。
まとめ
今回は、選択理論心理学の観点から、不登校の親支援についてお話ししました。今回の内容が皆さんの参考になれば幸いです。



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