不登校の親カウンセリングをしていると、
結構な割合で、「赤ちゃん返り」と
言えるような状態になることがあります。
今までは不登校の本で書かれているのを見て、
「へえ、そんなのがあるんだ」と思っていましたが、
実際に不登校臨床をしていると、
結構な割合で出てくるので、びっくりです。
ちなみに、こうした現象は心理学的には
「退行」とか呼ばれています。
で、ここからが大切なのですが、
赤ちゃん返りをした子の方が
意外と改善が早くなるということ。
もちろん、やり方を間違えると悪化する場合もあります。
今回はそんな「赤ちゃん返り」について考えて見たいと思います。
目次
まずは動画をご覧ください!
なぜ赤ちゃん返りをするの?
不登校の子どもの中で、今までとは違って癇癪を起したり、
幼くなってしまって、お母さんが戸惑ってしまうケースは割と多いです。
ちなみに、赤ちゃん返りをするのは、
大抵はエニアグラムで言う「子どもタイプ」の子が多いです。
大人タイプは基本は大人の考え方をするので、
子どもっぽく振舞うということはしません。
で、ここからが大切なんですが、
不登校の原因は「学校に合わないこと」です。
そして、子どもタイプの子は、
周りの目をして合わせようとしてしまいます。
そうなると、周りに合わせるために、
自分を押し殺したまま子ども時代を送る子は少なくありません。
そして、
「これ以上自分を殺すのか?」
という自分らしさが表れてきます。
要は不登校とは
「極限まで追い込んでしまった自分を守るための行動」なのですが、
実際不登校になったときには、
かなりのエネルギー切れを起こしてしまうのです。
ここに子どもが赤ちゃん返りをしてしまう理由があると
私は考えます。
幸せに生きる力を育むために必要なもの
不登校のお子さんの多くは、
自分らしさを押し殺して今まで生きてきました。
ちなみに、自分を抑え続けて、
幸せに生きることはできると思われますか?
もちろん、社会では自分を押し殺して
生きないといけない瞬間はいくらでもありますが、
「本当はこうしたいんだ」と言う気持ちに気づかないままだと
うつ病になってしまいます。
人が幸せに生きるためには、
「自分はこうしたいんだ」と
自覚しながらも周りと折り合いをつけるという
バランスが必要なのです。
でも、不登校初期の頃の多くは、
「自分はどうしたいのかわからない」と
訴える子は非常に多いのです。
要は自分らしさを押し殺してきた結果、
自分の感覚や思いもわからない状態です。
そんな子が幸せに生きるためにはどうしたらいいでしょうか?
それは「自分の感覚を取り戻す」ことに他なりません。
そのための手段の一つが
「赤ちゃん返り」ではないかと思うのです。
自分らしさを取り戻すのに必要な赤ちゃん返り
不登校の子がもう一度自分らしく生きていこうと思えるためには、
それができなくなった頃に戻る必要があります。
そうです。
赤ちゃん返りをするというのは、
自分をもう一度、作り直すための作業でもあるのです。
よく不登校の本とかでは、
「赤ちゃん返りはさせない方がいい」と書かれていますが、
子どもによっては成長の通過点である場合もあります。
させた方がいいとまでは言いませんが、
「この子には絶対必要だよ」
と思えるケースは確かに存在するのです。
赤ちゃん返りは親子関係のやり直し
で、赤ちゃん返りをするようになると、
当然ですが親子関係にも変化が現れます。
例えば、
身の回りを全部しないといけなくなった子
夜中にお母さんを起こして「ご飯ない?」と食事を用意させる子
「ぎゅっとして」と絶えず抱き着く子
私が関わったケースでは
お母さんのおっぱいを飲む子もいました。
で、この時に大切な視点が
その子の赤ちゃん返りを
お母さんがどう感じているかです。
嫌悪感があるのであれば、
そうした赤ちゃん返りには関わらない方がいいでしょう。
(もちろん、なぜそうした行動をとっているのか、
検討する必要はあります)
逆に、そうした子どもを自然と受け入れられるのであれば、
子どもの赤ちゃん返りにしっかりと向き合う必要があります。
親子関係、人間関係と言うのは
基本的には頭ではなく、心と体で感じる部分が
とても大切になります。
そして、赤ちゃん返りに向き合っていく中で、
再度親子関係が変化していくこともあります。
つまり、赤ちゃん返りはある意味では
親子関係にやり直しでもあるのです。
正しい向き合い方の例
ここで一つ事例を出していきたいと思います。
中学生になって不登校になった女の子なのですが、
半年ほど経ってからお母さんにべたべたと甘えるようになってきました何するにしても「お母さんと一緒じゃない」と嫌だと言います。
で、お母さんに聞くと、
「なんだか今のこの子の状態がとてもかわいく思えるんです。
なんでもやってあげたいという気持ちになります」と話されました。
そこで、私は
「思いっきり甘やかせるのもアリですね」
助言しました。で、その状態が1か月ほど続きました。
その頃から少しずつですが変化が出始めます。
まず娘さんですが、だんだんと自分でやりだすようになったのです。
お母さんが手を出すと
「いや、自分でやる!!」と言うようになります。まるで2~3歳児の反抗期のようです。
その頃になると、お母さんはその子の特性が大分わかっていたので、
時には喧嘩したり、時には話し合ったり、
そして時には放っておいたりと上手に対応されていました。そうなるとさらに変化が起こりました。
その子がいきなり「別室等からなら頑張れるかな?」と言うのです。でも怖そうで、
「お母さん一緒に来て」と言いました。お母さんは2つ返事で「いいよ」と答え、
そこからお母さんが学校まで一緒に登校するようになりました。そうなると、「大丈夫だよ。もうひとりで行ける」と言い、
今は一人で別室登校に行けるようになりました。
この例では、お母さんが子どもを理解した上で、
上手に赤ちゃん返りに対応できたことで、
少しずつ生きる力を身に着けていけるようになっています。
できたら専門家に相談しながら進めていく
ただ、こうした赤ちゃん返りの例では、
どうしてもお母さんにとって迷いが出てきます。
普通の大人であれば、
「いや、そんな甘えさせちゃダメでしょ」と
言われることも多いです。
なので、できれば専門家に相談していくことで、
これでいいのかどうかを確認しながら進めていくことが大切です。
まとめ
今回の記事のまとめです。
大事なのは親の感覚です。
そもそも子育ては大半が感覚的な部分で行われるものです。
そして感覚的な温かさで子どもは
「あ、この世に生きていいんだ」と思えるようになります。
いわゆる基本的信頼感ですね。
不登校の子どものサポートは苦行ではなく、
親子の絆を深めるためのチャンスでもあります。
ぜひ、今しかできない子どもとの関わりを楽しんでくださいね。
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