この記事は、発達障害と診断がついた不登校のお子さんを持つお父さん、お母さんに読んでほしいです。
記事を読むと・・・
〇 不登校の子が発達障害と診断されやすい理由がわかります。
〇 発達障害の知識を子どもの支援に役立つ視点が見つかります。
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発達障害だから不登校になったという誤った風潮
病院に行ったら発達障害という診断がついた
子どもが学校に行かなくなってから、スクールカウンセラーや学校の先生から「もしかしたら発達障害かもしれないから病院に行ってみたら?」と言われた方は多いと思います。
そして、病院に行って医師に診てもらうと、多くの方が「自閉症スペクトラム障害」「ADHD」「LD」といった発達障害の診断がつきます。
しかも、知能検査や心理検査のおまけつきです。
お母さんはショックを受けて、「こういう診断をいただきました」と教師やスクールカウンセラーに相談します。
多くの方がこんな経験をされているんじゃないかと思います。
医師がすぐに発達障害と診断する3つの理由
ちなみに、医師に行くと本当に高い確率で「発達障害」の診断はつきます。
その理由として、まず正常に発達できている人は稀です。
ほとんどの方が、何らかの発達のアンバランスを抱えています。
そして、発達障害は「症状によって社会や職業またはその他の重要な分野で臨床的に重大な機能障害が起こっている(DSM-5 自閉症スペクトラム障害の診断基準より)」というのが一つの診断基準になっています。
不登校とは学校にいけない状態です。
語弊がある言い方ですが、「すでに社会生活上に支障が出ている」と世間一般からは見られている状態です。
さらに言えば、発達障害を早期に発見するという国の義務があります。
発達障害者支援法という法律の第一条にこう書かれています。
第 一条 この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。
つまり、医師自身が発達障害の疑いがあれば、その診断を早期に出し、療育等の支援が取れるようにしていくということが求められているのです。
まとめると・・・
1)発達の偏りがない子は少ない
2)不登校というすでに社会的不適応とみられる状態である
3)発達障害の発見に努めないといけないという責務
これらの3つの要因が重なってしまうことが、発達障害の診断がつきやすいという理由です。
だからといって効果的な支援につながることは少ない
そして、一番の問題は、発達障害の診断がついたことで、不登校の支援にプラスになるということが少ないということです。
もちろん、知的障害があった場合や、発達障害の特性が強過ぎるためにクラスで日中過ごすとストレスがかかるのが明らかになった場合は、特別支援学級や特別支援学校に移ることで学校に行けるようになることがあります。
(実際にそういうケースもあるので、個人的には医療機関に行って医師に診てもらうか、カウンセラーに話をして明確にしておくことをお勧めしています。)
もしかすると、こま先生を増やすために特別支援学級に入級するという手段をとることもできるでしょう。
しかし、多くの不登校の子で発達障害の診断がつくことは、かなり微妙なラインのお子さんであることが多いです。
視覚優位であったりとか、聴覚優位であったりとか、若干自分の世界で動く傾向があるとか、見通しが持てないと混乱したりとか、対人関係が上手に作れなかったりとか。
でも、こういうのって多くの子どもに当てはまる傾向です。
不登校のお子さんだけじゃありません。
上記の発達のアンバランスさに留意した支援をすることで、その子が幾分過ごしやすくなる可能性は高いでしょう。
しかし、そこまでです。
発達障害のノウハウを使うことで、不登校が改善できる可能性は低いというのが私なりの実感です。
例えば、視覚支援したら、見通しを伝えていったら、SSTで社会性を身に着けさせたら学校に行けるようになったという事例はほとんどありません。
そもそもそうした特別支援のノウハウは予防に使うためのものであり、改善に使うものではありません。
ということを考えると、発達障害の診断がついたことで学校に行けるようになるなんてことはかなり稀だといえます。
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発達障害の診断を不登校支援に生かすには?
子どもを理解するツールとしてみよう
発達障害の診断名はそのままで考えるのではなく、子どもを理解するための一つのツールとしてみていくことが大切です。
例えば、「ADHD」という診断名がついた場合は、「そういえば、うちの子は衝動的に動いてしまいやすい傾向があるなあ」「片づけられないのはそういうことか!」と子どもの状態を客観的に理解するためのものとしてみることができます。
また、面白いことに、お子さんの発達障害の傾向というのは、遺伝子いることも少なくありません。
「そういえば息子のおっちょこちょいなところって、お父さん譲りだわ」と親子の共通点みたいなところが見えてきます。
ちなみに、ADHDのお子さんは集中力のムラが大きいのですが、一つ夢中になれるものが見つかると、ものすごい集中力を発揮することがあります。
また、「自閉症スペクトラム障害」の場合は、基本マイペースな子が多いです。
あとは視覚的に伝えると理解されやすいので、教えるときは紙に書いたりすると理解しやすいところがあります。
ただ、大切なのは上記の発達障害の傾向は、多くの子どもに当てはまるものです。
よほど発達のアンバランスさが大きすぎて関わりにくい場合は別ですが、少し距離を置いて軽い気持ちで発達障害という視点から子どもを見てみる形で、一つの道具として遊ぶ感じで使ってみるといいかなと思います。
もし、わからない場合は、専門のカウンセラーに相談してみましょう。
わかりやすく子どもの様子についての見立てを教えてくれますよ。
不登校の子で「発達障害」と思えた子は少ない
私は不登校や引きこもりのカウンセリングの時に、「発達障害特有の生きづらさで不登校になっていないか」を最初に確認するようにしています。
その上で、不登校の原因理解のメソッドに従って、「学校に行けない」原因をお母さんと一緒に考えていきます。
その結果、多くの不登校のお子さんと関わってきましたが、「この子は発達障害だ」と一瞬で思えた子はほとんどいません。
むしろ、「発達障害」という視点を持つことで逆に子どもの理解が邪魔されたことが多かったです。
うまくいった子の多くは「発達障害」という診断名に捕らわれずに関わり続けたケースです。
ということを考えると、不登校支援においては発達障害という視点を持つことがかえって邪魔になることが非常に多いという印象です。
発達障害という言葉は子どもを見る際、そして会っていく際に一つの先入観を勝手に作ってしまいます。
例えば、ADHDの診断がついた子が、頑張って教室に入ったけど、やはり我慢ができなくて教室から飛び出してしまったときに、「ああ、あればADHDの特性からだな」と思ってしまうと、それ以上の支援はできなくなります。
大切なことは、その子がどれだけ辛い中、頑張って教室の中に入っていたか、それでもやっぱり辛くなってみんなの視線が怖くなって、もしくはこのまま居続けることが不安になってしまったという、その子の気持ちです。
そこをしっかりと理解すること、そして「この子はそういう中でも頑張ったんだな」とその子の頑張りを認めていくこと。
それが本当に大切なことだと思うのです。
それが子どもの自信へとつながり、そして生きる力を伸ばしていくことにつながります。
そうした大切な作業を、「発達障害だから」という一括りで切り捨ててしまうことが本当に残念でなりません。
しかし、そうしたスクールカウンセラーも多いのも事実で、情けなく感じてしまいます。
「発達障害だから」という視点は脇に置いておく
不登校のお子さんを理解するときのポイントとして、発達障害という視点はとりあえず脇に置いておくということが大切です。
本やセミナーで勉強していってもいいですが、基本は目の前のお子さんの様子をしっかりと見ることです。
そして、お子さんがどういうときに不安になり、怖くなったり、イライラしたり、そして苦しくなるのか、子供と一緒に発見できるように関わっていくことが大切です。
そうした関わりをしていくことで、少しずつですが子どものことがわかるようになってきます。
そうなると、おのずと「この子は学校に行ったほうがいいのか」「それとも少し学校から離れたほうがいいのか」というのがわかるようになってきます。
そうした会話が学校の先生とできるようになるといいなあと思います。
そしてその積み重ねが子どもの安心感につながり、社会に出ていくための力となります。
まとめ
〇 発達障害という診断は割と簡単につきます。
〇 しかし、一部を除いて発達障害の診断名がついたことで不登校が解決することは稀です。
〇 そもそも発達障害と思えない子どもが非常に多い。
〇 発達障害は単なる子どもを理解する一つのツールとしてみるといい。
〇 大切なのは子どもを理解すること。そのために、発達障害という視点は脇に置いておくことも必要。
カウンセリングルームはぴっとでは、子どもを理解するためのカウンセリングやグループワークの開催をしています。
この理解のノウハウが少しでも広がっていくことを願って、活動を続けています。
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